「音をデザインするアーティスト」と呼ばれる、スズキユウリ。

肩書きだけ聞いたら、多くの人は普通の音楽プロデューサーや自身の曲を作成するミュージシャン等を想像するだろうが、彼はそれとは一線を置いている。

聴覚と視覚、人間にとって最も重要とされるセンスを両方から刺激するそんな作品を手がけているのだ。

今回は、そんな型にはまらないアーティスト、スズキユウリについてご紹介していく。

■経歴

1980年東京生まれ。

高校時代には、自分自身で楽器を製作しながら「明和電機」のコピーバンドとして、バンド活動を開始。

この活動がメンバーの目に止まり、日本大学芸術学部プロダクトデザイン科に進学後は、明和電機のアシスタントとして一緒にパフォーマンスを行う。

バンド活動を通じて、音楽とテクノロジーの関係を探求し始める。

大学卒業後は英国王立芸術大学(RCA)にてプロダクトデザインを学び、音楽、デザイン、アートの融合をより深めていく。

現在はロンドンを活動拠点とし、フリーランス・デザイナーとして、イベントのコンテンツデザイン、ワークショップデザインを手がけている。

■代表作

●2013年「ガーデン・オブ・ルッソロ」

大きなホーンのついた5種類の箱型オブジェ。ホーンに向かって声や音を発すると、それぞれ加工された音で返ってくる仕組みになっている。

音が逆さまに再生されたり、普通の声が歌声のように加工されたり、雑音のように加工されたり。

ハンドルがついているオブジェもあり、ハンドルを回すスピードによって、音の速度を変えることができる。(早く回すと再生スピードが上がり、ゆっくり回すと遅くなる)

●2017年「驚き花の植物園」

白いプラスチックでできたパイプと、カラフルなラッパ型のホーンを組み合わせることで、自由にオブジェを作ることができる作品。

見た目はもちろん、パイプの組み合わせによって「どう音が変わるのか?」を考えながらのオブジェ作りを楽しめるようになっている。

■作品のテイスト
スズキの作品は「視覚」だけではなく、音によって「聴覚」も楽しませてくれる。

作品はできあがって固定されたものではなく、流動性があるのも面白いところ。機械の操作によって、その場その時にしか見られない作品を作り続けることができる。

また、鑑賞者自身もアートに参加できるのもスズキの作品の魅力だ。

「こうやったらどう音が変わるかな?」と、我々自身で考えて作品作りに参加できるのも楽しい。

■作品に対しての評価

スズキの作品は、イギリスを中心として世界的に高い評価を受けている。以下のように、多くの賞を受賞していることからも、評価の高さをうかがい知ることができるだろう。

●受賞歴

2009年
Honorary mention (Interactive Art)
Prix ARS electronica

2012年
Designers in Residence
Design Museum London

2012年
Finalist PAD Award
Pavilion of Art and Design

2013年
Honorary mention (Interactive Art)
Prix ARS electronica

2013年
Honorary mention (Sound Art)
Prix ARS electronica

2016年
Designer of the Future Award
Design Miami/Swarovski

■過去のイベント

●主な展示会

2015〜2016年
「This is for everyone」 MOMA ニューヨーク

2018 年
「Furniture Music」 Stanley Picker Gallery キングストン アポン テムズ(イギリス)

2018年
「Sonic Playground」 High Museum of Art アトランタ

2019年
「Digital Electronium」 Barbican Gallery ロンドン

2019年
「Furniture Music」 Lighthouse グラスゴー(イギリス)

2019年
「Sound In Mind」 Design Museum ロンドン

2019年
「Welcome Chorus」 Turner Contemporary マーゲイト(イギリス)

2019年
「Sound Of The Earth Chapter 2」 Dallas Museum of Art ダラス

 
■今後の活動へ向けての期待

スズキは2018年より、世界最大のデザインスタジオである「ペンタグラム」のパートナーに就任している。

アート、デザイン、テクノロジー、サウンドの境界を広げ、今後も今までに見たことのない、新しい世界観を生み出し続けてくれることだろう。

イギリスを拠点にしているために馴染みが薄いかもしれないが、世界で活躍する日本人アーティストとして、今後の活動にぜひとも期待していきたい。