「切り絵」というと、あなたはどんなイメージを抱きますか?
切り絵とは、ハサミやカッターで絵を切り抜き台紙に貼る作品のこと。
多くの方は、人や動物、風景、植物などの切り絵の作品をイメージするであろう。
しかし、日本には、その切り絵の概念を覆し、独特な世界観を放つ切り絵作家がいる。
その名も、「尾関幹人(おぜきみきと)」氏。
■切り絵作家「尾関 幹人」の経歴・プロフィール
尾関幹人氏は、1976年 愛知県・名古屋市生まれ。
1997年の21歳のころから独学で切り絵を開始し、現在は名古屋を拠点に制作を行っており、国内外で数々の展示を開催しながら芸術表現を拡張していく、日本屈指の切り絵作家・切り絵アーティストである。
切り絵作家としてだけではなく、イラストレーターとして「男前豆腐」のプロデュースや、革製品メーカー「FURLA」とのコラボレーションなど、幅広い分野での活躍を広げている。
□尾関幹人氏の主な展示】
【個展】
・2015年
シンガポール「facing the afterimage」
東京 伊勢丹新宿「OVERLAP」
【グループ展】
・2014年
銀座「THE MIRROR」
■尾関幹人氏の代表作
微細で美密な切り絵作品を数多く発表している尾関幹人氏だが、代表作といえば初めての個展で展示した「BODY」シリーズと「ROAD」シリーズ。

複雑なパーツを集めたロボットモチーフの作品で、まるで切り絵とは思えない存在感と独特な世界観が多くの人の目にとまり、尾関幹人氏としての名が知られるようになった。
■尾関幹人氏の作品のテイスト
初期のころは、代表作である「BODY」シリーズと「ROAD」シリーズのような具体的でモチーフとなる作品を制作していた。
近年では少しテイストが変わり、紙を複雑に切り、その紙をまた重ね、紙の連なりから世界観を表現する新たな作品が生み出されている。

初期の作品に比べると、カラーが追加されたり、ハッキリとした線を描く切り絵ではなくぼやけたような、見た人の心をざわつかせるような作品調になっているのが特徴。
これらの作品は、伊勢丹新宿店で初開催となった個展「OVERLAP」にて展示した作品で、“重複×重複”をテーマに“過去と未来、これまでに蓄積された技術と新しい技術”というコンセプトになっている。
海外から取り寄せた紙によって作られるこだわりの作品で、見た人によって、ひとつの絵にも、模様のようにも見える。
初期と近年のテイストで共通して言えるのは、「切り絵には見えないほど微密で美しい」という点であろう。
■作品の制作過程を記録した動画が話題
2009年に公開された尾関幹人氏による切り絵作品の制作過程を記録した動画は、YouTubeやVimeoなどの動画共有サイトサイトにて世界中で累計70万回以上の再生回数を記録している。
尾関幹人氏が台紙をカッターで切っていく姿は、とても滑らかで見ていて本当に気持ちが良い。
サクサクと繊細な線を描いていきながら、みるみると尾関幹人氏らしい・尾関幹人氏でしか表現できない精妙な世界観が出来上がっていくのだ。
完成した作品だけではなく、カッティングをしている行為そのものまでもがひとつの作品になっていると言える。
この作品が、1枚の紙から切り出された絵だと信じられるであろうか?
非常に精巧な作業によって作り出される作品は、どれも驚くほどの存在感がある。
何よりも驚くべきポイントは、こんなにも繊細な作品なのに、下絵を描かずに仕上がられているという事実。滑りのいい手元の動きは確実で、まさに圧巻の職人技。
バランス感覚やセンスもさながら、まさに尾関幹人氏にしか作れないカッティングアートなのである。
こちらは、トヨタが公開した動画。
下書きなしの一発真剣勝負で、トヨタのプリウスをモチーフに切り絵を制作していく尾関幹人氏が映し出されています。
聞こえてくるのは、紙とカッターが触れる音と尾関幹人氏の呼吸のみ。
息が詰まってしまうほどの緊張感が伝わってくる。
完成した作品は、ミラーやトヨタのロゴなども細部まで表現されている。
しっかりとした立体感もあり、プリウスの爽快感や疾走感、臨場感までもが伝わってくるほど。これが切り絵だとは大半の人は思えないだろう。プリウスの魅力をさらに惹き出す素晴らしい作品だ。
■今後の尾関幹人氏の活動へ向けての期待
作品のみならず、制作過程を映し出すカッティングの行為までもがアーティスティックな尾関幹人氏。
今後の活躍も期待したいところですが、公式サイトを確認してみると、ここ数年は個展なども2017年を最後に行われていないようだ。
尾関幹人氏のTwitterをチェックしても、2017年9月23日の個展情報のツイートを最後に現在は稼働していない様子。
ただ、公式YouTubeを見てみると、2年前にアップされた動画が2本、その前の動画は6年前、9年前・・・となっており、動画のアップには数年の間隔がある。
こういった状況を見てみると、今は作品の制作に打ち込んでいたり、何か新たな挑戦を検討しているのではないかといった想像もできるであろう。
独自の切り絵作品だけではなく、イラストレーターとしてのプロデュースやメーカーとのコラボレーションなど、活動の幅も広い日本屈指の切り絵作家尾関幹人氏。ぜひ今後の活躍にも期待したい。